雨は君に降り注ぐ

「俺、何にも考えずに、ナンパだとかなんだとか言って…。その、勘違いで、あんな失礼なこと言って、結希ちゃんが怒るのも当然だと思うし、」

「ちょっと待って。」

 待って待って。
 工藤くんは何のことを言っているの?

「なんで、工藤くんがあやまるの?」
「だって、結希ちゃんのこと、きっと傷つけただろうし…。」

 工藤くんは、また、勘違いをしているようだ。

「私、傷ついてないし。怒ってもない。」

 工藤くんが、ポカンとした顔で、私を見つめる。

「むしろあやまるのは私の方で……。工藤くんは、私のことを心配して来てくれたのに、変な態度とっちゃって、ごめんなさい…。」

 私が頭を下げると、工藤くんは大慌てで、両手を振った。

「え、結希ちゃんがあやまらないでよ、悪いの俺だし、本当、もう、」

 工藤くんは、一息おくと、申し訳なさそうに言った。

「本当に、怒ってない…?」

 その声が、あまりにも切実だったから、私はつい吹き出してしまった。
 私は顔を上げると、精一杯の笑顔で言った。

「怒ってないよ。」

 工藤くんが、一瞬、息をのんだ。

 ?
 なんで??

「俺、また結希ちゃんに、バスケ、教えてもいいかな?」

 首の後ろに手を当てながら、工藤くんが言う。

 これは確か…工藤くんが照れた時のクセだ。

 照れるようなこと、あったっけ…?

「うん、また、よろしくね。」

 私は笑顔で答えた。

 工藤くんが、また、息をのんだ。
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