雨は君に降り注ぐ
母は、私に、自分の理想のすべてを押し付けてきた。
テストでいい点を取りなさい。
宿題はすぐに終わらせなさい。
塾へ行きなさい。
テレビは見てはいけません。
ゲームももちろんダメです。
とにかく勉強をしなさい。
勉強、勉強、勉強勉強勉強勉強勉強………
小学校に入った、最初のうちは、母の期待に応えようと努力した。
テストでいい点を取れば、母は喜んでくれたし、褒めてくれた。
それが嬉しかった。
でも、ある日気づいた。
母が私を褒めるとき、その視線はいつだって、私ではなく、答案用紙に向けられていた。
母は、私を見てはいなかった。
なんで。
母が必要としていたのは、私の成長、なんかではなく、結果。
すべては母の自己満足のため。
バカみたいだ。
小4のある小テストの時、私は初めて、平均点以下の点を取った。
激怒した母より、私は自分でその点数に驚いていた。
こんなハズがない。何かの間違いだ。
しかし、どんなに疑ったって、目の前の答案の結果が変わるはずもない。
私は失望した。
自分に、そして母に。
たったこれだけのことで、小一時間も小言を並べ続ける母に、失望した。
この人にとっては、本当に、結果だけがすべてだったんだ。
そう思った瞬間、何もかもがどうでもよくなった。
私は、その日から、努力することをやめた。
父は、仕事に生きる人だ。
平日は早朝から深夜まで家にいないし、休日は一日書斎に閉じこもりっぱなし。
私の10歳の誕生日、父は私と、ある約束をした。
私の誕生日を祝うために、7時までに帰ってくること。
父は普通の会社員で、定時は6時半。
会社から家までは歩いていける距離にあるので、7時までに帰ってくるということは、決して難しいことではないはずだった。
年に1回の誕生日。
特別な日。
私は、父が帰ってくることを、信じて疑っていなかった。
時計の短針が8を指しても、まだ期待していた。
時計の短針が9を指しても、まだ待っていた。
結局その日、12時を過ぎても、父が帰ってくることはなかった。
父は、私より、仕事を優先した。
私の目からは、その日以来、涙がこぼれなくなった。
私は、両親から嫌われているんだ。
母は、私より、答案が大切。
父は、私より、仕事が大切。
私が母と喧嘩をするとき、父はいつでも母の味方につく。
私が父と口論になるとき、母はいつでも父の味方につく。
2人とも、私の言い分を聞こうとはしてくれない。
私は、両親から愛されていない。