雨は君に降り注ぐ

「じゃあ、次の質問。先輩の誕生日は?」
「なんだか、質問大会みたいになってるね。」

 先輩は、楽しそうに微笑む。
 その笑顔を見て、私はなぜか、安心した。

「僕の誕生日は…6月12日、だよ。」
「6月12日…。」

 復唱すると、何かが頭に引っかかった。
 この日付、私、どこかで見なかったっけ…。

 今日は、朝起きて、コンビニ弁当を冷蔵庫から出して、それから、卓上カレンダーを見た…。

『今日は、6月12日、日曜日。
 日曜日。』

「えっ!今日なんですか?!」

 私が驚いて声を上げると、一ノ瀬先輩は苦笑した。

「そうだよ。」
「えっと、おいくつに、なられるんですか…?」
「21。」
「わあ、大人だぁ…。」
「君は、まだ子供だね。」

 先輩は優しく微笑むと、私の頭をなでた。
 髪がくしゃくしゃになる。
 やっぱり、嫌じゃない。

「何か、欲しいものはありますか?」
「ん?プレゼントってこと?」
「はい。」

 先輩は、ちょっとの間、考えた。

「僕は……世界中の人が幸せに生きていてくれたら、それでいいかな。」
「なんですか、それ。」

 私は、思わず笑ってしまった。

 先輩が、あまりにも純粋なことを言うから。
 まるで、汚れのない子供のようなことを。

「君は?」
「え?」
「誕生日。」
「ああ。私は、3月10日、です。」
「まだまだ先だね。」

 先輩が、微笑む。

「覚えとくよ。」
「名前はすぐに忘れちゃうのに?」

 わざと、意地悪く言ってみた。
 でも、先輩は、まるで気にしていないかのように、さらりと受け流した。

「絶対、忘れないよ。」

 私の頬が、赤く染まる。
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