雨は君に降り注ぐ

 …

 ……

 ああ、もう嫌だ。

 このドアの向こうに、誰か、いる。

 この頼りないドア1枚へだてた向こう側に、いる。
 私と向かい合うようにして、立っている。
 笑いながら、立っている。

 それが、男なのか女なのかは分からない。
 ただ、この向こうに『いる』ということを、感じる。

 …根拠なんてないけど。

 でも、魚眼レンズを覗く勇気なんて、私にはない。

 怖い。

 怖い。

 結局、私はその日、まんじりともせずに朝を迎えた。



 私はその日をきっかけに、大学からの帰り道に、多少の遠回りではあるものの、駅前の大通りを使うことにした。

 するとそれから、まるで今までが嘘だったかのように、

 私へのストーキングはぱったりと無くなった。
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