雨は君に降り注ぐ
それから、いくらかの月日が流れて、今は7月。
もうすぐ夏休みというのもあって、大学校内は、なんとなく活気づいている。
夏が、始まる。
あれから私は、理子に、あるお願い事をされた。
『その一ノ瀬先輩って人、今度紹介してね。』
私は、もちろん承知した。
次、一ノ瀬先輩をどこかで見かけたら、すぐに理子の元へ連れて行こうと思っていた。
…だけど。
一ノ瀬先輩は、なかなか見つからなかった。
まあ、そんなものだろう。
私は、半分あきらめていた。
5月もそうだったじゃないか。
先輩に会いたくて会いたくて、でも見つけられなかった。
そして、私が先輩のことを忘れかけた頃に、ひょっこりと現れた。
今回もきっと、同じようなものだ。
私はきっと、しばらくは先輩に会えない。
そして、私が先輩のことを忘れかけた頃、油断している時に、突然、不意打ちをくらわせるかのように現れるのだ。
こんな考え方ができるのは、きっと、私が、先輩のことを理解し始めたからだ。
だから、先輩がひょっこり現れるまで、気長に待とう、と思えた。
でも、理子は違ったようだ。
なかなか現れない一ノ瀬先輩に対して、明らかにイラ立ち始めた。
「まったく、結希に寂しい思いをさせるなんて、なんて男なの?」
別に、私は寂しくはないのだが。
慣れた、というか…。
そう言うと、理子はさらに怒る。
「結希も結希!もっと甘えてもいいと思うよ!」
「甘えるって…。」
「1人にしないでえ~って、言ってみるとかさ。」
「一ノ瀬先輩は、そんなキャラじゃないし…。」
「キャラの問題なの?!」
理子は理子なりに、私のことを心配してくれているのだろう。
確かに私も、そろそろいい加減、寂しくなってくるころだ。