雨は君に降り注ぐ
「用件というのは、その、1か月たっちゃったんですけど…。」
私は、ポケットに入っていた、それを取り出した。
一ノ瀬先輩には、いつ、どこで会うかわからない。
そう考え、この1か月、ずっとパーカーのポケットに入りっぱなしだった、それ。
「…これは?」
それは、青い包装紙とリボンできれいにラッピングされた、プチサイズのプレゼントボックスだった。
中身は、茶色いうさぎのキーホルダー。
雑貨屋でこれを見かけたとき、まっ先に先輩の顔が思い浮かんだ。
少し女の子っぽいかな、とも思ったが、私は迷わず購入した。
「お誕生日、おめでとうございます…。」
「え、僕に?」
私がうなずくと、先輩は、その箱を受け取った。
大事そうに、大きな手の中に包み込む。
「開けていい?」
「あっ…、できれば、私の見ていないところで開けてください。」
目の前で開けられるのは、さすがに耐えがたい。
恥ずかしさと嬉しさで、きっと倒れてしまう。
「えーそっかー?」
先輩は残念そうに、青いリボンをいじくった。
そして、何かを思いついたように、
「じゃあ、向こう向いてて。」
と、言った。
なんだか、ものすごく嫌な予感がする。
そしてきっと、この予感は当たるんだろう。
私には、大人しく、先輩に背中を向けた。
リボンが、シュルシュルとほどけていく音がする。
続いて、箱のふたがこすれる音。
…ああ、やっぱり。
一ノ瀬先輩って、少し意地悪なんですね。
そういうところも含めて、好きなんですけど。