雨は君に降り注ぐ

  日曜日。

 嵐が丘大学との、練習試合、当日。

 私は朝早くから、お弁当作りに励んでいた。
 今日試合に出場するメンバーたちに向けての、差し入れだ。

 卵焼きを焼いて、ウインナーをタコにして、唐揚げをつくって、餃子を詰めて…。

「よしっ、できたっ。」

 完成したものは、ずいぶんな量になってしまった。
 そして、茶色の割合がバカに多い。

「まあ、こんなもんでしょ。」

 男子がほとんどなんだから、問題はあるまい。

 お弁当箱を風呂敷で包んで、リュックに入れる。
 スマホで時間を確認してから、私はアパートを出発した。
 


「わあ、本当に来てくれた!」

 体育館に入ると、工藤くんの爽やかな笑顔が、私を出迎えた。

「約束したんだから、当たり前でしょ。」

 私も、笑顔で返す。

「試合は、4時からだっけ?」

 現在、時刻は12時過ぎ。
 試合にはまだまだ時間があるが、ほとんどのメンバーがすでに、体育館に集結していた。

 …皆、マジメ。

「そうだよ。結希ちゃんは、こんなに早い時間にどうしたの?てっきり、4時ギリギリに来ると思ってたんだけど。」

「私は…、」

 リュックから、布に包まれたそれを取り出すと、工藤くんの顔がぱっと輝いた。
 分かりやすく喜んでいる。

「差し入れ、持ってきた。皆さんでどうぞ。」

 体育館に、歓声が響き渡った。
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