雨は君に降り注ぐ

 お弁当は、大好評だった。
 特に、工藤くんと涼介先輩に。

「すごいなあ、結希ちゃん。料理もできるなんて、ほんとすごい。わあすごい、この唐揚げも、揚げ加減がちょうどいいや。すごいすごい。」

「さすが、女の子って感じだね。吉岡さんって、女子力が高いんだ。」

 すごいを連発する工藤くんと、優しくほめる涼介先輩。

 他のメンバー達も、餃子にがっついている。
 作ってきたかいがあった。

 お弁当箱は、あっという間にカラになった。

「え。それってもしかして、結希の手作り弁当?」

 かわいらしい声が、体育館に響いた。

 見ると理子が、コンビニのレジ袋を両腕に下げて、立っている。

「嘘、もっと早く来ればよかった。結希の手料理、食べそこなったあ~。」

 理子が頭を抱えて、大げさになげく。
 あちこちから、笑い声があがった。

 すごい。
 理子が来たとたん、体育館の緊張していた雰囲気が、柔らくなった。

 やはり理子には、場をなごませる才能があるようだ。

「これ、皆さんに。」

 そう言うと、理子はレジ袋を広げて、中身を取り出した。

 それは、スポーツドリンクやミネラルウォーターなどの、ペットボトル飲料だった。
 ざっと数えても、全部で10本以上はある。
 よくこんな重いものを、その小さな体1つで持ってきたものだ。

 私はあらためて、理子に感心した。
< 88 / 232 >

この作品をシェア

pagetop