雨は君に降り注ぐ
お弁当は、大好評だった。
特に、工藤くんと涼介先輩に。
「すごいなあ、結希ちゃん。料理もできるなんて、ほんとすごい。わあすごい、この唐揚げも、揚げ加減がちょうどいいや。すごいすごい。」
「さすが、女の子って感じだね。吉岡さんって、女子力が高いんだ。」
すごいを連発する工藤くんと、優しくほめる涼介先輩。
他のメンバー達も、餃子にがっついている。
作ってきたかいがあった。
お弁当箱は、あっという間にカラになった。
「え。それってもしかして、結希の手作り弁当?」
かわいらしい声が、体育館に響いた。
見ると理子が、コンビニのレジ袋を両腕に下げて、立っている。
「嘘、もっと早く来ればよかった。結希の手料理、食べそこなったあ~。」
理子が頭を抱えて、大げさになげく。
あちこちから、笑い声があがった。
すごい。
理子が来たとたん、体育館の緊張していた雰囲気が、柔らくなった。
やはり理子には、場をなごませる才能があるようだ。
「これ、皆さんに。」
そう言うと、理子はレジ袋を広げて、中身を取り出した。
それは、スポーツドリンクやミネラルウォーターなどの、ペットボトル飲料だった。
ざっと数えても、全部で10本以上はある。
よくこんな重いものを、その小さな体1つで持ってきたものだ。
私はあらためて、理子に感心した。