雨は君に降り注ぐ
20分ほど歩いてやってきたのは、小さな居酒屋だった。
工藤くんが、あからさまに眉をひそめた。
「キャプテン、…飲むつもりですか?」
「打ち上げなんだから、当然だろ?」
涼介先輩が、軽く答える。
工藤君の眉間のしわが、さらに深くなった。
「女子2人は、少なくとも飲めないじゃないですか。俺だって…。」
「あれ。工藤って、まだ飲めない?」
「……19です。」
涼介先輩が、わざとらしく、驚いた顔をする。
彼はどうやら、どうしても飲みたいようだ。
「じゃあ3人は、コーラってことで。」
「カラオケとかファミレスとか、そういう選択肢はないんですか?!」
工藤くんの反論むなしく、私たちは、その居酒屋に入ることになった。
涼介先輩は、ずいぶん楽しそうだ。
「じゃあ、とりあえず生6…じゃなくて5つ。あとコーラを3つね。」
涼介先輩が、あっという間に注文を決めてしまった。
工藤くんは、まだ不満そうに、頬をふくらませている。
……リスみたい。
私は、初めての居酒屋に、少し興奮していた。
居酒屋というものは、当然ながら、未成年には縁のない店だ。
入店する機会なんて、そうそうあるものではない。
少し、大人になった気分だ。
実際に、アルコールを摂取するわけではないのだが。