雨は君に降り注ぐ

「乾杯ー!」

 グラスの、かちりという音が、気持ちよく響く。
 続いて、男子メンバーの、のどがゴクゴクなる音。

 工藤くんも、やっと乗り気になってきたようだ。
 涼介先輩と、楽しそうに会話を始めた。

 私と理子も、コーラをのどに流し込む。

 しばらくすると、おつまみの類も運ばれてきて、その場は一気に賑やかになった。

 私たちは、時間を忘れて楽しんだ。



 時計を見ると、8時半。

 もうそんな時間か。

 私と理子、それに工藤くん以外の人たちは、いい感じにお酒がまわってきたようで、楽しそうにはしゃいでいた。

 理子は、いつの間にか涼介先輩の隣の席に移動していて、彼が酔っていることをいいことに、しきりに、軽いボディータッチを繰り返している。
 涼介先輩も、まんざらではなさそうだ。

 理子、ダイタン…。

「ずいぶん遅くなっちゃったね。」

 突然、耳元で声がした。

 驚いて振り返ると、私の席のそばに、工藤くんが立っていた。
 工藤くんは爽やかな笑みを浮かべると、申し訳なさそうに言った。

「ごめん、驚かせちゃった?」
「ああ、まあ、少しは…。」
「皆、ずいぶん酔って来たみたいだ。」

 工藤くんは、視線を理子たちのいる方へと向けて、言う。

「キャプテン、お酒に強い方なのに。相当飲んだんだな。」

 工藤くんは、半ば呆れたように言った。

「工藤くんは、涼介先輩と、仲がいいんだね?」
「うん、尊敬してる。」

 私は、思わず笑みをこぼした。
 工藤くんも、優しく微笑む。

「結希ちゃん、今日は、どうだった?」

 唐突に質問されて、私は少し戸惑う。

「どうって…。うーん……、試合を見るのも、こうやって、飲み会??じゃなくて、打ち上げに参加するのも、すっごく楽しくて、なんだか…、幸せな1日だったな。」

「そっか。よかった。」

 工藤くんは、爽やかに目を細める。

「あのさ、結希ちゃん。」

 突然、工藤くんが、顔を近づけてきた。
 私の耳元で、ささやくように、小声で言う。

「今から2人で、ここ、抜け出さない?」
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