夜明け前の鬼ごっこ
遠くへと逃げてしまわないうちに、あの少年を追いかけないと。

俺が少年の気配がする方へと体を向けた時、意外な人物と目が合って、俺も彼も目を見開いた。

「何で……」

2人の声が重なる。いやいや……それを聞きたいのはこっちなんだけど。何で、このゲームに友達が参加しているのかなぁ。

「それで、あんたは誰に恨まれているわけ？」

友達を見ても、流れるはずの記憶は流れない。でも、今は友達に対して……異常なほどの恐怖を感じるから、友達が何かをしていたっていうのは想像つくけど。

「何もしてないよ。それにしても、どうして血塗れ……なの？」

俺の服を怪訝そうな顔で見た友達は、俺の目に視線を移した。

「……見て分からない？」

俺が笑うと、俺の隣から鳴き声がして鳴き声がした方を見る。そこには猫がいて、猫はじっと俺を見つめていた。その猫の表情は、どこか苦しそうに見える。

『……彼を見て記憶が流れないのは、私が人間じゃないから』

どこからか声がして、俺は辺りを見渡した。

『私は、昔彼に飼われていた猫です』

その言葉を聞いただけで、俺は彼が何をしたのか分かってしまった。

「……へぇ……飼い猫に暴力とは……悪趣味じゃん」
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