swell
 
 
ふわりゆらりとあてもなく、海の中を周遊する魚みたいだと、心さ迷う自分を冷笑した。




時刻は朝の十時半。


午前中と言い換えたほうが正しいか、なんてどうでもいいことを脳内に巡らせながら、私は山手線に揺られていた。


かれこれ一時間はそうしている。ちょうど停車した駅名を確かめると、あとひとつで一周するらしかった。


通勤模様の人たちの姿は減り、なんとなく、車内にゆったりとした空気が漂う。窓の向こうの空は雲の混じった青空で、境界あたりのコントラストが綺麗だと、ぼんやりと見つめる。そういえば空飛ぶペンギンにまだ会いに行けていない。


大学に通う経路は、家から徒歩で駅に向かい、私鉄から中央線に乗り換えるのが普通なのだけれど、今日の私はそれをせず、円を描く山手線に乗り換えていた。


「……朝イチの講義、サボっちゃったなぁ……」


こんなことじゃいけないと思いながら、私のお尻は座席から浮いてはくれず、足も石像のごとくぴくりとも動いてくれない。


ため息をひとつ、無意識につきながら……


昨日のことを、思い出す。



――いいね。楽しい大学生活みたいで。



ぽつりと、親友が溢した言葉だった。


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