愛は惜しみなく与う【番外編】
その色々は話すつもりないから聞いてくるなと、杏から圧がかかり、男は黙った。


「また飯いこうや」

「あーーまたな」


杏はチラリと俺を見て曖昧に返事をした。俺からは何も言えないよな。
地元の先輩に久しぶりに会って、飯行こうなんて…よくある話だ。

ただな…


「ええよな?彼氏くん!うまい飯探しとくわ」


挑発されてる気がする
気じゃないな。されてる、これは


「あーバイトと喧嘩で忙しいけど、また行けたら言うわ」

「携帯かわってる?」

「うん、変わってる」


そして男は杏の携帯を取り、自分の携帯に電話をかけた。


「これ、俺の番号。登録しといてや」

「おっけー!ほなあたしら、時間が差し迫ってるし、行くわ」


篤志先輩バイバイ!杏は手を振り、俺も頭を下げておく。

頭を上げれば男と目が合い、胡散臭く微笑まれた。


行くで

そう言って俺の手を握って杏は足速に歩き出した。

えっと

親しそうに見えたけど、そうでもなかったのか?薔薇の人たちの名前も出てきていたから…
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