愛は惜しみなく与う【番外編】
初めての人
「おい、杏!そっち行ったぞ!」
「わかってるわ!右側から追い込む!」
「俺は左から行くね!」
朔と杏と響が、真剣な顔で走ってきた。
そして
同時に飛び込む
「っしゃーー!捕まえた!」
「手こずらせやがって。はぁ」
「ほんと、しぶとくて困るね」
黒蛇?ちがう。凰牙?それも違う
なんだと思う?
「 犬 」
そう、犬
どうして俺もこんなことに付き合わされているのか。こんなにまだ寒いのに、薄着で走り回る3人
それを保護者がわりについて来させられた俺。
寒い
「やりぃ!あたしの作戦勝ちやな」
「は?てめーの作戦なんて、うんこでも思いつく!」
「なんやて?もっぺんゆうてみぃ!その口黙らしたるわ!!」
はぁ
もうすぐ高校三年生なんだ
いい加減大人になってくれなきゃ困る。杏に至ってはもうすぐ成人なんだから。
「ねぇ、泉?あの子どこいった?」
二人の言い合いから逃げてきた響がベンチに座る俺の隣に腰をかける。
あの子とは、公園にいた女の子。
そしてこの3人は、その女の子が連れていた犬を追いかけていた。