愛は惜しみなく与う【番外編】
「もしもし?どしたん?え、近くにおるってなんで?はぁ…なんであんたらもあたしの位置情報わかってんねん。え?志木?はぁ…うん、うん。あたし、今皐月ちゃんと桜さんと旅行中やねん。うん、うん。え?関東くる前の旅行?場所被りすぎやろ、うん、うん、あーわかった」


なにやら電話の向こうの相手と話し込んでいる。
位置情報ね…
新が言ってた。杏ちゃんの携帯というか、みんなの携帯に位置情報アプリが入っているんだとか。

入れたくなる気持ちがわかるよ。


急にいなくなったりするんだもんね。


杏ちゃんの話すことを聞いていると、誰かがこの辺りに来ているらしい。


「ちょっとさ、警戒だけしといて?あーまぁ多分って感じやけど。うん、あたしも気にはしておくし。何かおかしなことあったら言って。うん、うん。わかった。ほな気をつけて」


…?

杏ちゃんは電話を切ってお待たせと笑った。

そのまま杏ちゃんは目の前を通ったタクシーを止める。荷物多いもんね


「ほなホテルいこか」


変わらずそう笑ったから、安心してタクシーに乗り込んだ。いつもと変わらない杏ちゃんだったから。
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