愛は惜しみなく与う【番外編】
目で追うことも困難なスピード

杏ちゃんはヒラヒラと舞ってるみたいに見える


攻撃を避けるその仕草さえも、綺麗だ



「あの子が本気でやってるの久しぶりに見るけど、相変わらず……無駄のない綺麗な動きね」


「ほんま、一生追いつけへんわ。人生2回目でも、杏ちゃんの動きについていける自信ない」


2人とも、優しい眼差しで杏ちゃんをみている。


喧嘩が目の前で始まれば、眉を顰めたり、目を細めてみたり…
痛そうだなと顔をしかめたりする。

けどあたしは、少しキラキラした目で見ていたかもしれない。



「あたし達、みんな杏に憧れてるのよ。今も昔もね。汚い世界だけど、貴方達の彼氏のいる世界よ。その中で…真っ直ぐ生きてるから、杏は綺麗なの」


目を逸らさなかった


最後の最後まで


動きが見えているのか
相手が動くよりも早く、杏ちゃんが動いてるように見える。


すごい



「かっこいい…」


桜さんはそう呟き、あたしもそれに頷いた。


「あの子、女の友達って、あたしと敦子くらいしか居なかったから仲良くしてあげてね。良くも悪くも、一線ひかれるのに慣れてしまってるから。きっと、仲良くなれた貴方達のこと大事にしたいんだと思う」
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