愛は惜しみなく与う【番外編】
サトルの涙は澄んでいた


「はぁ。友達になろうって俺のそばまで来て、生きるよう言った。俺は杏の手を取った。それで脱出しようとしたとき、俺を助けに来た杏が、落ちたんだ」


杏は怪我の理由は教えてくれなかった。足場が崩れたとしか聞いていない。

足場が崩れたのはそうだけど


杏は生きることを諦めたサトルを助けに行って、そして、巻き込まれたんだな。


きっと杏は、俺たちがサトルを憎まないようにしてたんだな。


あの時に、サトルを助けに言って怪我をしたと聞いていたら、今もサトルを憎んでいたかもしれない。

そうならないように、杏は誰にも言わずにいたんだな。

ほんとに、優しすぎるよ


「自分のものにならないなら殺そうとしてたのにさ。杏が目の前から消えて、落ちていった時、俺はこんなはずじゃなかったって思った。初めて自分が醜く思えた。汚い人間だなって。

それに…あの爆発で…誰も怪我をしなくてよかったと思ってしまった。杏の少しの言葉で俺は、人間に戻れたのに。普通に最初から…何かから奪おうなんて考えなければ俺はきっと………」


そのままサトルは黙ってしまった
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