愛は惜しみなく与う【番外編】
「朔は……私には会いたくないでしょ?」

「なんでそう思うの?」

「私は…あの子と生きる事じゃなくて自分のことしか考えず、あの子を残して死のうとした」

……自殺を図ったってやつか。
うーん。なんかな


「もう、10年以上前のことやろ」


10年
長いよ

今この人がここで過去と向き合いながら苦しみ前を向こうとしていることは

朔を蔑ろにしている訳ではないから


ちゃんと朔のことを思っているやろうから


「ちょっとミスっただけや。朔もそう笑うよ。あの子は貴方が思う以上に、優しくて強くて…母親想いの子やから」


くそ
涙止まらへんな
朔…
がんばってな


ううっと声を出して泣いてしまったお母さん。
周りにいた人も不思議そうな顔をしている。申し訳ないことをした。


「今からこの人頑張って息子に会うから、応援してあげて」


そう言うと周りの人たちも潤んだ目を向けて、朔のお母さんに声をかけた。

同じような人たちばかりやと思う。


子供を守れなかったり、子供の親権をとれなかったり…そんな人たち。
たった1人の息子に会える喜びは、痛いほどわかるやろうから。
< 399 / 645 >

この作品をシェア

pagetop