愛は惜しみなく与う【番外編】
めりめりと音が鳴るのではないかと言うくらい、無理矢理泉が鈴をあたしから引き離す。
痛い痛いと言ってる鈴にお構いなし…
やれやれ
疲れるなぁ
「泉さん、まさか、妹のあたしに嫉妬してるの!?」
鈴も煽るような言い方をする。
このお口、どうにかせんとアカンよな。ん?あたしが言うなって?
「杏に触っていいのは俺だけだ」
あんまりベタベタするなと、真顔で言う泉。恥ずかしくないんか?
あたしは恥ずかしいわ。
「おかえりなさい。外で話さず中に入ったらどうかしら。志木、紅茶の準備を」
そう言いながらお母様が家の中から出て来た。
お母様の顔色は良さそうで安心した。
今は仕事が忙しい時期やろうけど、鈴も志木もおるからな。なんとかなってるよな。
「お久しぶりです、お母様」
「……普通に話しなさい。気にしなくていい。さぁ、出張のお土産もあるから」
お母様は柔らかい雰囲気になった。
鈴から聞いてる分には、相変わらず仕事のことに関しては厳しいらしいけど、普段の会話は緩くなったと言っていた。
「じゃあ…普通に…がんばる」
そう言うとふわりと笑って家の中に入っていった。びっくりした。