愛は惜しみなく与う【番外編】
あたしが紅茶をこぼしたから、応接間の絨毯が変わってた。
何円したかは聞かんとこう。


「杏様、紅茶を淹れてきますね」

「うん、志木が淹れるやつがええ。よろしく」

志木の紅茶は美味しいからね。
同じように真似ても、作れへん。

応接間の椅子に、泉と座る。なんか変な感じ。


「俺も紅茶の淹れ方教わったぞ?」

「あぁ、執事体験した時か」


あれを執事体験と呼ぶな!と泉は笑っている。
泉が東堂財閥に潜入するときに、志木の代わりの執事として、ここで一通り教わっていた。


「全体的にあの時って寝不足だったから殆ど覚えてないけど」


これなら覚えてるぞ?と腕を曲げてペコリと頭を下げた。
手の角度も覚えてるらしい。

使う時ないけどな。

そんなほんわかした空気に、志木が入ってきた。


「何してるんですか?プロポーズなら許しませんよ」


あたしにペコリと頭を下げている泉をみて志木がそう言った。
これがプロポーズなら嫌やわ。なんで東堂家の応接間でやねん。


「安心してくれ。此処ではしない」

「まだダメです!」

「オカンかよ」


この2人が揃うとわちゃわちゃするよな。
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