愛は惜しみなく与う【番外編】
「そうね。2人の気持ちは分かった」


お母様は身体を前のめりにしてあたし達の顔を交互に見ている。

そしてにこりと笑った。


「泉くん、貴方には本当に感謝してる。杏に居場所を作ってくれてありがとう。杏のこんな顔が見れるのは貴方のおかげ。ぶつかってきてくれてありがとう。

貴方が杏を支えたから、東堂財閥は、今もしっかり機能している。それに私も…杏と話せた。

だから、今度はあなた達2人に私が返す番よ」


………お母様?

そのままお母様はスーツの内ポケットに手を突っ込んでいる。その表情からは何を今から言うのか読み取れない。


「実はね、志木から聞いてたのよ」

「…何を?」


「杏はきっと、ここで経営を学びたいと言ってくるって」


志木がもう既にお母様に言ってたってこと?


「志木はね、それだけ言って、色々出来る全てのことを考えろだなんて言うのよ。東堂財閥の影の支配者は志木ね」


お母様はクスクスと笑ってある紙を取り出した。


「関西の東堂財閥は、おかげさまで誰かの入る余地もないくらい大きくなったわ。ずっと前からね、こんな話が出てたのよ」


ここを見て?そう言われて紙をみる。お母様が指を差したところの文字を読んで、一瞬息が止まった。



「え?東堂グループ関東支店?」


そう
そこにはそう書いてある。
関東に会社…できるん?

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