愛は惜しみなく与う【番外編】
意味がわかったのか、顔がほんのり赤くなった杏。
いい反応。ご馳走様。

と手を合わせて拝もうとしたら、杏は背伸びをして俺の耳元に手をやり囁いた。


「ほなお泊まりしよっか」って


あれかな?
誰か杏に可愛い行動教えてたりする?
素でこの行動なの?

不意打ちを喰らい今度は俺の顔が熱くなるのを感じた。ほんと勘弁して?可愛すぎるのは罪だ。


与えられたら、さらに求めてしまう。それが怖くて自制していた。
だって最初はただ、そばにいられたらいいなって思っただけだったから。

なのにどんどん俺は欲深くなっている。


そばに居たい。頼られたい。俺しか見ないで欲しい。俺のことを好きになって欲しい。

気持ちが伝わればそれでいいと思ってたのに。

触れたい。
もっと近づきたい。
俺しか知らない杏が見たい。
杏の特別が欲しい。

日に日に欲深くなっている。


だから怖くなるんだ。


「泉?ほんでどこ行くの?なんか食べるー?」


ピタリと腕にくっついた杏は下から俺の顔を覗き込む。バカップルとか俺には無縁だと思ってたのに。


「幸せに浸ってた」

「はやない?まだ家出て3分くらいやで」


大袈裟じゃなくて、本当に何もしてなくてもただ一緒にいるだけで幸せに浸れる。
お互い付き合うのが初めてだから、なかなか距離感が掴めないでいる。

慧と慧の彼女は、どこでもイチャイチャして、かなりオープンに関係を話す。

新と佐野は、仲がいいのは伝わるが、あんまり俺たちの前でベタベタしてるのはみないし、2人の関係もそこまでオープンではない。
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