愛は惜しみなく与う【番外編】
「ひゃぁ!」

「ほら、始まったよ?見てなきゃ」


杏が映画を見るためにとご丁寧に部屋を暗くしてくれていた。
暗がりでゴソゴソと杏の服に手を滑らせたら、杏が2cmくらい浮いた。


「あほ!見させる気ないやろ!」

「いや?触れてるだけ。えっちなことはしないよ?」

「んな!!!その触り方やめてよ!」


綺麗にくびれたウエストをすりすりしていれば思いっきり手の甲をつねられた。痛すぎて逆に声が出ない。

反射で手を引っ込める。いってぇ!

あたし悪くないもん!
そう言い切った杏の顔は、少し目が潤んでいてこの暗さでも瞳がキラっと光る。

可愛い


まぁあんまり杏の見たい映画を邪魔するのは良くないなと思い、寝転がる杏の後ろから少しだけ抱き寄せて俺もその映画を見ることにした。

映画のシーンはなんとも……うん。杏らしいというかなんというか。


銃撃戦が始まる。
大きな音が部屋に響いている。

なんの映画なんだろう。


ボケーーっと画面を眺めていると、俺に背を向けていた杏がくるりと振り返った。


「どうかした?」


なんだか少し不機嫌そう。
頬がぷくっと膨れているから。


「集中切れた」

「え?ごめん。でもまだ始まったばっかりだよ?」
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