愛は惜しみなく与う【番外編】
むーーーっと声に出している。
これもしかして怒られるやつ?完全に画面に背を向けてしまった。


「ごめんって。見ようよ」

「……寝る前に見る」

「じゃあなに?ご飯食べる?」


機嫌を損ねてしまわぬようにお腹を気遣ってみたけど、まだお腹空いてへんわ!と怒られた。
困った。

杏って顔に出るから分かりやすいのに、今はなんだか分からないぞ?


「拗ねたの?」

「……せんの?」

「せん?」

首を傾げたはずの俺は何故か天井を見上げている。あれ?なに?
杏が上にいる。

押し倒されたと気付くのに時間がかかった。


「泉が悪い。ソワソワして映画とか見てられへんやん」

「あ……え?」

「ええ加減その間抜けヅラやめてくれる?」


ケラケラ笑って杏は俺の鼻を摘んできた。間抜けだ?俺のことだよな?


「2人きりなの久しぶりやし堪能しよかな!」

待ってと言う前に口を塞がれた。
あれ?杏さん?こんなに積極的だったっけ?

髪の毛が落ちてこないように片手で髪を抑えている杏の手に自分の手を重ねる。


「今日はいっぱい泉とくっつけるから!映画はいいや!」


可愛いキスだけして、ぎゅーっと俺の上に抱きついてきた。

いやいや、なんなのこの子は。
可愛すぎやしないか?

くっつきたいって事でいいよな?なんだ。銃撃戦とか見てるから全然その気はないのかと思ったよ。
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