小さな勇気
そんな日々が続くと、私も作られた笑顔をキープすることを諦めだす。

朝のホームルームでも制服の上に握りこぶしを作り、うつむき続ける私。

担任の先生が連絡事項を伝えてくれるが、耳に届くのは3割程度。

残りの7割は、私の全身を通り抜ける。



「1週間後の5月に、プロのスタイリストさんが主催をしてくださるヘアショーがある。そこで、ヘアモデルを募集する」



私は、思わず顔を上げた。

ヘアモデル……。


高校生時代、この学校のオープンキャンパスに通いつめていた私。

ヘアショーも何度か見させてもらった。
ずっと、ヘアショーのステージに立つことに憧れていた。



『やりたい』



素直に思った。

ヘアショーに出れば、何か変わるかもしれない。

もう一度、輝きを取り戻せるかもしれない。


私の枯れていた心に、『希望』という雨が降り注いだ。
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