thistle
《ハジマリ》




ーー……は本当に良い子だね。


 昔、母によく言われていた言葉。


 これは夢なのだろうか?


 靄が掛かった様に、ぼんやりとした母の姿を正確には見ることが出来ない。目の前に居るのに、 それが妙にもどかしく、腹立たしい気持ちになる。


「……お母さん?」


 私は母に手を伸ばした。


 その瞬間、母だったモノの顔はドロリと爛れ落ち、異臭を放つ化け物になった。


「ひぃ……!」


 私は小さな悲鳴を上げる。


「あぐググ……あ、アぁあ」


 甲高い不気味な呻き声。


 曲がった身体を引きずりながら、目の前に来たソイツに、私は首を掴まれ、羽交い締めにされた。逃げ出そうとするが、その力は強い。


「っ……いや、やめて!」


 必死に制止する声も虚しく、白い歯を剥き出しにしたソイツは大きな口を開けーー私を食らった。
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