夜空を見上げて、君を想う。
きっかけ
朝8時15分。
だんだんと教室が賑やかになり、それぞれが仲の良い人と集まって昨日のテレビの話だとか今日の授業がどうだとかを話している。

「おーっす、月斗。」

挨拶してきたのは、中学1年からクラスがずっと一緒の相馬颯(そうまはやて)

「おはよう。」

「まだ眠そうだな…1時間目、数学の神野(じんの)だぞ?」

「それな、超眠い。サボろうかな。」

「おま、あいつの授業でサボりかますとか勇者だろ。」

「いや、でもちょっと朝から具合悪いんだよな。」

「嘘つけっ!」

そう言って颯が俺の首に腕を巻きつけ、2人で馬鹿みたいに戯れあう。

「まーたやってるよ。」

やめろよとか笑い合っていた俺たちに声をかけてきた、隣の席の堀田。

「いやだって、こいつ1限サボるとか言い始めてんだぜ?」

「うわっ、勇気あるねー。」


顔をしかめながら俺に向かってそう言い、堀田は自分の席に着いた。すると颯は堀田に声をかけて2人で話を始める。

2人の会話のテンポは正直ついていけないところがあり、堀田が来たら俺は置いてけぼり状態だ。

「ははっ、それやばすぎっ!」
「けどな、」


ピーンポーンパーンポーン

ヒートアップするそんな2人の会話は、朝のチャイムによってかき消され、颯は席に戻って行った。









朝のHRが終わり、1限が始まりそうだった時。

「千星、今日なんか…元気ない?」

「えっ、そんなことないよー。」


堀田がいつもつるんでいるグループの会話が後ろの方で聞こえた。


「でもなんか、声暗いよ。」

「それな、なんかあったの?」

「うちらの会話上の空だし。」



そうだろうか、さっきの颯との会話を見ていた限りいつも通りヘラヘラ笑って楽しそうなあいつだったと思う。

「なんにもないけどなぁ…でも、一応保健室行こうかな…そう言われてみれば具合悪い気もするし。」

「そうしな。」

「ついていこうか?」

「平気平気!」

結局保健室に行くことにした堀田は、後のことを友人に頼み教室を後にした。

言われてみればって、何故か堀田らしくない返しに気を取られていたら1限の始まりを告げるチャイムが鳴った。

しかし神野はいつまでも来ず、代わりに担任の梅原(うめはら)先生、通称・梅が来た。



「ごめんなー、さっき言い忘れてたんだけど今日神野先生休みだから俺が自習の監督なんだよ。」



咄嗟に颯の方を向いたが、「サボるんじゃねーぞ」と口パクで言われた。
はいはい、と顔に出して梅の声に耳を傾ける。



「じゃ、神野先生から貰ってあるプリント渡すぞー。」



と、言われれば「げっ」「最悪」「終わったわ」と教室中に諦めの声が飛び交う。
俺も心の中でそれに参加し、渋々課題のプリントにとりかかった。
< 1 / 56 >

この作品をシェア

pagetop