夜空を見上げて、君を想う。
「…ふぅ」
一息呼吸を置く声が聞こえ、俯いたままの堀田は声を振り絞りながらぽつぽつと話しを始めた。
「…高校一年生くらいだったかな。あれ?って思い始めたのは。」
「お父さんとお母さんが本当に、些細なことで言い合う日が多くなったの。二人とも同じ職場でお互い仕事人だし、大人には色々あるんだって…仕方が無いと思ってた。」
「…でも、今年の6月くらいにお父さんが大切な取引先との電話で一方的にああだこうだ言っちゃって、すごく大事になったの。」
「そこからはもう早かったなあっ…ほぼ毎日言い合いがあって、20年も続いた二人の関係は限界がきたんだと思う…っ。」
だんだんと声が途切れていく。
必死に涙を押し殺し、言葉をあやふやでも手探りに紡いでいく堀田。
「うん。」
「…っそれ、で…月斗と保健室で会った前の日にっ、いわれ、たの…っ。」
俺は次に待つ言葉を察した。
「離婚するっ、てっ…」
一人っ子の堀田にとって約一年間半の生活はどんなに辛かったのだろう。
春日はそばにいるものの、全てを頼るのは堀田の性格からしてできない部分もあったと思う。
普通の、ありふれた、世に言う「幸せ」な家族をもつ俺にはわからないこともある。
「…そうか。」
「それだけじゃない…っ」
「うん。」
「わ、たしっ…!」
「それで…よかったってっ、おもっちゃったの…っ!」
…よかった?
離婚が悲しいわけではないのだろうか。
堀田は再び息を整えて話し始める。