夜空を見上げて、君を想う。
「……どう、してなのかなって」
「うん。」
「好きで、お互いに愛しているから結婚して私を産んでくれて…」
だんだんと怒りを含めた語気になる堀田の話に耳を傾けながらやっとこいつの本心が聞けるんだと思った。
「なのに、はなればなれになっちゃうなんて…っ」
「どうして…?だって…っ」
「だって!お父さんがお酒を辞めればいいだけじゃん…!同じこと繰り返さなければいいだけじゃんっ…!それで、ちゃんと仲直りすればいいじゃん!!」
「なの、に…」
「それが……それだけが、できないの…っ」
「…そうだな。」
簡単なことが難しい。
簡単なことができない。
大人には本当に色んな事情があるし、堀田の両親はきっとまだ喋っていないことがたくさんあるだろう。
堀田だってそんなことはわかってる。
でも、辛いものは辛いのだ。
「…夜が怖いの。夜になると、2人が喧嘩する声が聞こえて…いくら耳を塞いでも、聞こえるのっ…」
そう言って、弱々しく両手で自分の耳を塞ぐ堀田。
夜が引き金となって、真っ暗の中聞こえないはずの喧騒が聞こえてしまう。
……俺も、あったな。
「堀田。」
そっと、耳を塞ぐ堀田の両手に自分の手を重ねるように添える。
「………つき、と」
やっと、顔を見せてくれたな。
俺は握る手を少しだけぎゅっと強めた。