夜空を見上げて、君を想う。
「お前は最低なんかじゃない。」
「…!」
堀田の手を離さんとばかりに握って、俺は必死に言葉を並べて伝える。
「ただ、人より人のことを考えすぎるだけなんだ。お前は誰よりも人の気持ちをわかろうとして、自分の気持ちを殺してまで相手を尊重しようとする。お前の悪い癖だ。」
堀田はとても優しいやつだ。
でもその優しさが自分を傷つけることもある。
他人のことを傷つけることはなくても、自分自身の傷が増えていってずっと苦しいままだ。
「思ってもいいんだよ。あいつが悪いんだ、こいつが悪いんだって。言っていいんだよ。辛い時は辛い。苦しい時は苦しい。」
「自分を大切にしてやれ。」
「………………ぅっ、ん」
小さく声を漏らして頷く堀田。
俺の言葉は伝わっただろうか。
あの時の堀田のように、俺はできただろうか。
「…………夜空を見上げるんだ。」
最後に、これを言おう。
「今日みたいな満月かもしれないし、半月や三日月みたいに欠けている月かもしれない。」
綺麗な月でなくても
月光が淡くても
「…………それでも」
「ずっと、お前のことを見守ってる。」
堀田が俺にかけてくれた言葉のニュアンスを真似して伝えたが、さすがに気がつくだろうか。
「…月斗」
そう言って驚くような、少し困惑したような顔を見せる堀田。
思い出したのか、と期待を抱いたが一瞬にしてそんな思いは消えた。
「………くさすぎ」
…やっぱり、覚えてないよな。
「ふふっ、はは」
まあ、あれは中学一年生の時の話だし仕方がないか。
「…………やっと笑ったな。」
でも、いいんだ。
お前が覚えていなくても、俺がお前のおかげで救われたのは変わらない。
今、お前がこうやって星のように輝く笑顔を向けてくれるだけで…
それだけで、嬉しいんだ。
「ありがとう…こんな暗闇に、月斗といるだけで…………誰かと一緒にいるだけで、あったかい。」
「そうだな。」
再び2人で夜空を見上げる。
「こんな綺麗な満月を独りで見上げるのは、悲しいもの…」
小さな呟きだったが、俺はしっかり聞いていた。