男装で青春してますっ!
それからの様子は全く知らない
僕だって、その当時は両親に気に入られたくて必死だったんだ
恥ずかしいけど、弟のことを気にする暇なんてなかった
自分のことで精一杯だったからね
それでも、いずれ時がたって
僕は両親に疑問を持ち始めるようになったんだ
そしたら、弟が恋しくなった
たいして好きでもなかったし、むしろ誰とでも仲良くなれる弟は僕のコンプレックスだったはずなのに、会いたくなったんだ
だから、こっそり連絡をとった
昔だったらそんなことしなかった
でもその時は既に、両親の性格には嫌気がさしてきていたからね
別に連絡をとったことがばれようが、関係なかった
ただ、元気にしているか確認したかっただけだったし
そんなこと言っても、緊張はしたよ
なにせ、長い間ろくに会話もしてない弟への電話だったからね
それでも、僕は通話ボタンを押して、黙って受話器を耳にあてた
「はい、藤堂です」
しばらくして、聞き心地のいい声が聞こえた
聞いたことないはずなのに、春子さんの声だと分かった
一回で春子さんだって思ったよ
こういうとこは、やっぱり兄弟だなって思う
綺麗な声に、僕は聞きほれてた