お空へ、お見送り
「ただいまー」
ママと弟が帰ってきた。
「おかえり!」
「あら、莉乃(りの)。ムー、どこにいるか知らない?」
ママがそう言ったけれど、確かにムーの姿はどこにもなかった。
「ムー? あれっ! いない!」
「ムー! ムー! どこなの、ムー!」
「ムー、だいすきなご飯だよ!」
キャットフードの袋を持ちながら、弟も叫んだ。
騒ぎを聞きつけて、お姉ちゃんも部屋から出てきて探すのを手伝ってくれた。
「ムー、ムー!?」
「ムー、戻っておいで!」
カーテンの裏にもいない。
キャットタワーにもいない。
押し入れの中にもいない。
ベランダにもいない。