パトリツィア・ホテル
この彩林館高校は、県内随一の共学の進学校で、生徒数も最大規模のマンモス校。

私の通っていた中学の生徒達は、みんな目指していて、他県からの入学希望者も多く、競争率もハンパなかった。



好きなカラオケもライブも行かずに、一生懸命、真面目に勉強しなければ絶対に合格できなかった高校。

だからきっと、この黒髪でも浮くことはないと思っていたのに……


(考えが甘かったか……)


クラス内を見る限りは、みんな髪を染めて、お洒落な格好をして、キャピってる。

私はまた深く溜息を吐いて立ち上がり、入学式……体育館へ向かおうとした。



その時だった。


「えっ、新宮 勇人(ゆうと)!」


「きゃあ、うそ……本物、初めて見たぁ」



高い身長、キリッとした切れ長の目、程よく焼けた小麦色の肌。

そして……やっぱり、お洒落な茶色の髪。


すごくイケメンな男子が教室に入ってきて。
私はちょっと、ドキドキしてしまった。




「ねぇ、知ってる? 新宮くんって、あの超大型ホテル……パトリツィア・ホテル社長の御曹司なんだよ」


「えー、すごい。すごすぎる! 私達とは、住んでる世界が違うよね」


「もし新宮くんと結婚できたら……すっごい玉の輿だよね」


「バーカ。あんたには無理だって」


体育館へ向かっている間、そんなキャピキャピした声が耳に入ってきた。
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