パトリツィア・ホテル
「パトリツィア・ホテル……」


私、そのホテル……行ったことある。

幼稚園くらいの頃に行って、初めてのふっかふかのベッドに感動した。

うちでいつも寝ていた、冷んやりと固い布団とは大違いで、横たわったらいつの間にか眠りについて……

確か次の日、附設のテーマパーク『パトリツィア・ランド』にお父さんとお母さんと行ったんだ。

そして確か、そこで大きな事件が……




「さーき! 何、ボーっとしてるの?」

朱里の声で現実に引き戻された。

「まぁ、校長の話だもんね。無理もないか」

朱里はそう言って、苦笑いした。



体育館での入学式。

流石はマンモス校だけあって、体育館も東京ドームかと思うくらいに大きくて。

現実に戻ってきた私は、校長先生が長ったらしい挨拶をしている間も、その広大な空間にただただ圧倒されていた。



「……この彩林館高等学校で、是非とも実りある、輝かしい高校生活を送って下さい」

校長先生が締めの言葉を言って深々とお辞儀し、演壇から降りた。

その時だった。



「えっ、うそ!」

「すごい! 新宮君だ!!」

体育館の所々から黄色い歓声が上がった。

私はその歓声につられて前を見た。
< 4 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop