パトリツィア・ホテル
頭頂部が光った校長先生とはまるで対照的な女子生徒達の反応を呼び起こした主。

新宮 勇人が茶色の髪をなびかせて、体育館の舞台……演壇へ向かって颯爽と歩いていたのだ。



「それでは、新入生代表の新宮君に挨拶をしてもらいます」

入学式司会の先生の声とともに、彼は一歩前へ出た。

その途端に女子達の騒つく波紋が体育館中に広がった。


「新入生代表だって!」

「そういえば、新宮君、入試の成績トップだったらしいよ」

「うそ! すごい……すごすぎる!」


ふと朱里の方を見ると、彼女も目をトロンとさせて、演壇の彼を眺めていた。

(朱里もホの字か……)

小学生の頃から一緒にいた私には分かる。

これは朱里の一目惚れした顔だ。



「……僕達はこの高校で、精一杯学業に励むとともに、苦楽を共にする一生の親友……学業以上に大切なものを見つけます」


(確かに、カッコいいなぁ……)

教科書通りの挨拶を話すその御曹司様を、私はぼんやりと見つめていた。

正真正銘のイケメン……顔立ちは整っているし、足も長いし、背も高い。

だけど、どこか……無理してるように見えた。

分不相応の地位に、必死で背伸びしてついていこうとしているような。
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