此処は最果て
「どこにも行けないから、どこにも行けないなら。
最期くらいは自分一人で終われるとこを探してた」
「…」
「他の誰にも会いたくなかった。生まれたときに人が大勢いたんなら最期くらい自分で決めたっていいだろ、俺の人生なんだから。お前は」
「…全く同じ」
「嘘つけ」
本当だった。
どこにも行けないことを、世界が終わると知った日におれは知ってしまっていた。学校最後のHR。担任が一週間後、世界が終わるので皆さんと今日でさよならですってなんでもないみたいに笑った日。
同級生はカレカノとどこぞへ行くんだ、とか。銀行強盗して海外に逃げるんだとか。今まで見たこともない景色を見に地球の果てまで行ってみる、そう希望を見出していたというのに、翌日おれは何事もなく制服を着て学校に向かう支度をしていた。
そこで母さんが侑吏愛してる、愛人の次にってのたまって。
父さんが最愛の人に会いに行くって切り出して。
心に空いたのは家族の喪失なんかじゃない。こんなとき何をしたらいいか、どこにも踏み出せないどこまでも変わらない自分だった。
「…同じだよ」
所詮自分だ、と思った。
どこまで行っても変われない。世界がひっくり返っても。
「だからどこにも行けないことを体現してる列車に乗って、人知れず死ぬのもありじゃねって思ったの」
センチメンタルっしょ、と笑うけど男は特に笑わない。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
定期的なリズムで決められた区画を走り抜ける列車には、相変わらずおれとこいつの世界だけ。