此処は最果て
「あんたの話を聞かせてくれよ」
「…別に面白いことなんもない」
「うっそつけー色男。惚れた女の一人や二人いんだろ、彼女とか彼氏とかいや彼氏はおかしいか」
「お前ほんとよく喋るな」
貸して、と言われて歩み寄ってきたそいつにカメラを取られた。おい、誰がいつ触っていいっつった? と思うけど、おれがみてきて最後に残したい世界は全然綺麗じゃなかったから、なんとなく一枚一枚真面目に見られて恥ずかしくなって手で隠した。でもすぐに跳ね除けて、また車の衝突や虫の死骸や、荒廃した町、でも唯一定期的に映す一点の曇りのない空に心の奥底が悟られてしまいそうで嫌だ。
「空、好きなの」
「…」
「急に黙んなよ」
「好きだよ好きでわりいかクソ」
「別にいんじゃね」
俺も好き、って男が言って、そして隣に座っておれの首にストラップを提げたまま触るからその距離は近かった。
世界が終わる日。その瞬間は、車窓からたった一人で落下する核爆弾を捉えようと決めていた。その光を捉えて、笑いながらああ綺麗だなって、それでこの命を終わらせんの。
全く厨二くさいけど、馬鹿みたいな世の中だから、変えられない自分だから、そんな終わり方でいいかって思ってた。それがなんだよ。なんでお前さっきまでそっちにいたのにおれの隣に座って真面目に写真見てるかな。
これじゃひとりで終われない。
「昔、空日記つけてた」
「まじか…おれもだわ」
「ふは、やっぱ気が合うな俺たち」
さっきまで構うなって感じだったのに猫みたいな男だな。
カメラを見たまま軽く目を細めて笑うそいつがそんな風に言うから、本当に嫌になった。冗談じゃねえ、ふざけんな。こんなこと思いたくなかったからひとりで終わろうとしてたのに。
ひとりでいるとこ見つけられてさ、見つけてしまってさ。
死にたくないとか思い始めてくるじゃんか。