此処は最果て
「…怖い?」
「はあ? 誰が、ぜんぜん」
むしろざまあみろって感じ、そう告げたのは本心だった。
くだんなくてままなんなくて、必死にもがいても現実はちっとも笑いかけてくれやしない。自分らしく、自分でいても後ろ指さされて笑われて。まともでいようとしたっていつのまにかぐにゃぐにゃに曲がってた。
誰かのせいにして自分の弱さを肯定して、世界が終わるその日ならきっと自分は変えられる。もし変えられなくても人知れず絶命する命なら、そこに名前はなくていい。誰にも見つけられなくていい。
世界が、あったということ。
ここに生きていたということ。
そんな大それたただ一つに、ちっぽけに泣きそうにはなるけれど。
「…情緒不安定な女だな」
カメラの終わり、おれの最期の写真。いまのところ。
男の仏頂面が映ったカメラを返されて、顔をあげる。
「…あり、バレてた?」
「わかるわ」
「すげーな。ご近所さんとか、声低いし背はこんなだけどショートカットでまるで見た目が男だからよく男に見間違えられんのに、なんだ、バレてたか。さすがイケメン」
ないすう、と指でつんっとしたらめちゃくちゃダルそうに睨まれた。ふは。変な男だやっぱ、こいつ。そして同時に良かったとも思う。
世界が終わる前に遭遇した最期の人間が、私を見つけてくれた男が、人間が、多分こいつでよかった。