此処は最果て
死ぬ間際、私は人生で一番私らしくいられた。
「…やばい、今生きてて一番生きてる、って思ってら」
「それは死ぬ間際だからじゃねえの」
「やー、ちがうね。楽しくなっちゃったね。そんで生きたくもなってきた。どーすんだよこれ、あ、切なっ! すげー切なくなってきた! 胸が! 苦しい! ぎゅーってする! どうしよ!?」
「知らねーし全部言うじゃん」
「あんたと会うのがあと一ヶ月早かったら、世界は変わってたんかな」
ふは、って笑って座席に正座し、世界を見る。
走り抜ける車窓からいよいよだ、と国旗を振り回しながら道路の真ん中を歩くひと、
最愛の人と抱き合って世界の終わりを嘆くひと、
大笑いして今日を終えようとしてるひと。
その全部が無様で、まざまざと見せつけられたおれたちの生で、きまりが悪くてわらけてくる。
取り出した懐中時計が命の終焉残り5分を切った頃、呆然と車窓から世界を眺めてた。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
定期的なリズムで決められた区画を走り抜ける列車には、相変わらずおれとこいつの世界だけ。