カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「実は、もうすぐ生理なんです。衛生用品はどちらへ捨てたらいいですか?」
手早くお伺いしなければ、と思い、同性なのだからあまり悩まず直球で尋ねた。
近藤さんはなぜかポカンとしている。今まではキリッと格好いい仕事ぶりだったのに、目を見開き、「へ?」と聞いたことのない気の抜けた声を出す。
どうしたのだろう。変なことを聞いたつもりはないんだけど。
「近藤さん? すみません、トイレにサニタリーボックスが見当たらなくて、それで……」
念のためもう一度、わかりやすく尋ねるが、近藤さんの表情は変わらない。
しかし数秒沈黙が走った後、彼女は時間をかけてまた真顔に戻り、「では」と話し出す。
「トイレの背面の引戸の中に、サニタリーボックスを用意しておきます。そちらへ捨ててください」
よかった。ホッとして、「ありがとうございます」と会釈をする。
「……いえ、べつに」
近藤さんの声がひどく素っ気なく感じ、急に胸が不穏な音を立てる。
帰っていく彼女をついでに玄関まで見送ったが、無表情な顔つきがさらに厳しく引き締まっているように見え、私は身に覚えのない自分の胸をギュッと押さえた。