カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
……でもさすがに、隼世さんに限ってそれはないと思う。
彼は仕事でも一度腹を括ったら曲げないようなところがあり、私にプロポーズをした時点で覚悟は決めているはず。数日でぐらつくような曖昧な気持ちのまま結婚を決断したわけじゃないだろう。
私が思っていたより、彼は奥手だったということなのかな。
近藤さんとふたりでエレベーターを上がり、家に帰って来た。
午後六時。おそらく隼世さんの帰宅は、今日も七時以降になるだろう。
リビングに寄ると、近藤さんがダイニングテーブルの上のティーカップを片付けているのが目に入る。
彼女が家の片付けが済まないまま私を迎えに来たことはなく、不思議に思い尋ねた。
「もしかして、誰か来ていたんですか?」
彼女はシンクでカップを洗いながら「はい」とうなずく。
「隼世さんの弟の、斗真さんがいらしてました」
「え?」
会社内に弟さんがいるとは聞いていたけど、私はまったく関わったことはなく、思わず彼がいたと思われるダイニングの席に目をやる。
噂では、埼玉の支社でエリア統括をしているらしい。
そういえば、今は私が使っている部屋は弟さんが泊まるためのものだと話していたっけ。