カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
モヤモヤは焦れったさを超えて苛立ちに変わり、私はキッチンを叩いて「近藤さん!」と大きな声を出していた。
怒鳴ったところで彼女は答えてはくれず、グツグツと煮たったシチューを再度味見している。
「問い詰められてもお話しできませんよ。気になるなら、直接本人に尋ねてみてはどうです?」
シチューをすすりながらの彼女の提案に、私は咄嗟に「たしかに」とつぶやく。
私も斗真さんには本人に聞けと虚勢を張ったのに、いざ自分も隼世さんに直接尋ねるとなると怖じ気づいてしまう。
認められたら、どうしよう。
近藤さんが口を割らない時点で怪しい。口止めをされているということは、突きつけた仮説は真実だと言っているようなものだ。
妊娠していると誤解していたから私を好きだと口走ったのだとすれば………。
ーー彼の態度がよそよそしくなったのは、誤解に気づいて、結婚する理由がなくなったから?
一時間ほどで隼世さんは帰ってきたが、結局、私はなにも聞き出すことはできなかった。
真実を知るのが怖かったのだ。