カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「ただいま」
自宅に到着し、玄関に立ってボソリとつぶやくが、見えている奥のリビングまでシンと静まり返っている。
おかしいな、菜々花さんは自室にいるのかもしれないが、近藤さんが出てこない。
ほんのりと味噌汁の匂いがしており、食事は作り終えていることがわかる。買い物かどこかに出掛けているのかも。
俺は鞄を玄関に置き、スーツのまま、菜々花さんの部屋の前に立ち尽くした。
「……菜々花さん」
ノックをしたが、返事がない。ついに部屋に閉じ籠ってしまったんだろうか。
最近様子がおかしいけどどうしたの、と勇気を出して尋ねようと思ったのだが、無視をされてはさすがに心が折れる。
一度、部屋で着替えてから出直そうと考え、踵を返す。
すると、部屋とは反対側のバスルームの扉が突然開きーー。
「あーんもう、着替え忘れちゃっ……た……て、えっ? ……隼世さん?」
全裸にバスタオルを一枚巻いただけの姿の、しっとりと髪の濡れた菜々花さんが現れた。