カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

手帳かなにかのページを破ったそのメモを手に取り、食い入るように読む。

【いろいろとご迷惑をお掛けしました。これ以上同居はできません。私のことは、もう忘れてください。 星野】

紙の右端に残る水滴の跡に触れながら、メモを持つ手が震えた。涙を流しながらこれを書いた菜々花さんが先ほどまでここにいたのかと思うと胸がえぐられ、焼けるように熱くなっていく。

忘れて、とはどういう意味だ。今さらそんなことできるわけないだろう。俺のすべてが菜々花さんを求めているのに。

すぐにスーツのポケットからスマホを取り出し、菜々花さんの番号に電話をかけた。耳にあてるとコールは三回で切れ、もう一度挑戦したが今度はワンコールで切られた。

電話に出てくれない。

リビングから「やっぱりいないでしょう?」と背後に移動してきた近藤さんに、俺は「何度も言うが、先に報告してくれ……」と力なくつぶやいた。
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