カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「きみ、スタッフに気に入られてたな。さすが取り入るのが上手い」
隣で失礼なことを言っている斗真さんにため息をつく。
「さすがってなんですか」
「兄貴のことも、その愛想のよさで取り入ったんだろう?」
「違いますっ」
取り入るとは心外だ。好きでそうなったわけではない。女の園で鍛え上げられただけだ。
私はマニュアルに目を落としながら、瞳を潤ませた。お願いだから隼世さんの話題を出さないでほしい。忘れられなくて、つらくてたまらないのだ。
忙しさで頭から消えるかと思ったのに、総務部で隼世さんが困っていないかとか、急な異動でパートさんに文句を言われているじゃないかとか、結局彼のことばかり考えている。