カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~


◆ ◆ ◆

「星野さん、おかえりなさーい!」

翌日から総務部へ戻り、金曜日の業務後。
例のバルで、パートさんたちが〝おかえり会〟なるものを開いてくれた。
乾杯のグラスがカチーンと陽気な音を立てる。

私は主役として真ん中のテーブルに座らせられたかと思えば、その隣に隼世さんが無理やり「課長はここね!」と連れて来られ、並んで座ることに。
まるで高砂のようで、これはもう気を遣われているのではなくおちょくられている。

「星野さん、来月の手術、がんばるのよ! お見舞い行くからね!」

「いえいえ、そんな大袈裟な……」

「アタシも前に親知らず抜いたの。もう痛くて痛くて」

そう言って頬を押さえて苦い顔をしてみせる柏木さんの頭を、佐藤さんがポカンと叩く。

「親知らず抜くのと一緒にしちゃダメよ! 星野さんは全身麻酔よ!」

「麻酔かかってんだからいいじゃないのぉ」

「手術ってその後が大変なの! 傷が痛むわ動けないわ、切ったとこから血も出るんだから!」

安心させたいのか不安にさせたいのかわからない話で盛り上がるパートさんたちにひきつった笑みを見せながら、私は「がんばります」と返事をした。
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