カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
彼女が背を向けると、俺は不自然な胸の鼓動に追い立てられる。
このまま知らないふりを続けていいのだろうか。気になってどうにかなりそうだ。
あの夜俺がなにもしていないとしても、上司としてここ最近の様子がおかしいことを尋ねるべきだろう。
そうだ、俺はきっとなにもしていないが、あくまで上司として。ここは思いきってーー。
「……星野さん。この間の、ホ、ホ、ホテルでの件、なんですけど」
声を震わせながら俺がつぶやくと、彼女は立ち止まる。
そして苦笑いをして「はい」と俺を振り返った。
なんて言えばいいんだ。あの夜なにがありましたっけ?とは聞けない。告白のほかにはいったいなにがあったんだろう。
俺は後頭部をかきながら「えっと」と溜めた後、ついに、
「その後、どうですか……? 体調も優れないようですが」
と、すべてぼやかした卑怯な質問を投げ掛けた。
大丈夫だ。きっと俺のせいじゃない。
そうだろう?