カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「……課長」
星野さんは瞳を揺らして俺を見つめている。なんでそんな顔をするんだ。
焦らされる高鳴りと、罪状を宣告される動悸が一緒に襲いかかってきて、今にも心臓が止まって崩れ落ちそうになる。
「課長は優しいですね。あの夜も……。私、課長が初めてだったんですよ」
……えっ。
彼女は長い睫毛の目を伏せ、髪を耳にかけるしなやかな手をお腹へと下ろし、大事そうにさする。
「体調のことも気づいてくれたんですね。あれから、もしかして……って不安になってしまうことが多かったんですが。実は明日の有休で、産婦人科に行ってきます。そこではっきりしますから」
えっ、えっ。待ってくれ。
俺は座って口を開けたまま、なにも言葉が出てこない。
立ち上がろうとするが、足も動かない。
「どんな結果でも、なるべく課長には迷惑をかけないようにしたいと思っています。では、お先に失礼しますね」
彼女はそれだけ言い残し、一礼して出ていった。背中を目で追うが、もう唸り狂った自分の心臓の音で、なにがなんだかわからない。
取り残されたオフィスで俺はひとり呆然とし、塞がらない口を押さえる。
「……嘘、だろ……?」
ーーどうやら俺は、あの夜、彼女を妊娠させたらしい。