カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「そ、そうです」
「……あの、一応念のため。帰りに浜松駅の売店でもいいので皆さんにお土産を買って来てくださいね。人数は二十五人分。三十個入りのお菓子がいいと思います」
「……え?」
「連休中の前島さんも食べられるように、一週間は日持ちするものを選んでください。できれば、何種類か味が選べるものだと喜ばれますよ」
気まずくて彼の顔を見られず、早口になっていく。
コーヒーの砂時計がちょうど終わり、それを素早く彼に手渡した。
「……ありがとうございます」
お礼を言われて会話が区切れるが、課長がなにか言いたげなのが態度でわかる。
あんなに酔っていたのに、やはり昨夜のことをしっかり覚えているのだろう。
こちらが気楽になった代わりに彼を悩ませて、申し訳ない気持ちが込み上げる。
気にしないでほしい。明らかに私がフライングをしただけなのだ。
「……星野さん。あの、金曜の夜の件ですが」
きた。やっぱり課長は尋ねてくれる。
それもこんなにやりづらそうに、言葉を選んで慎重に切り出された。