カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

しかしその日の帰り、部長が不在のため、残業中は私と課長のふたりきりとなった。
黙ってPCと向き合う私たちだが、重い空気が流れている。

課長はまだ私の変化を気にしている。
先ほど具合が悪そうだと気づいてくれたあたりから落ち着かない様子だ。

今はなにも言わなくていいだろう。嫌でも明日には結果がわかるのだし。
そしたら土日が開けた月曜日、結果を告げればいい。

「……星野さん。もうすぐ終わりますか?」

しかしやはり、課長から声をかけてくれた。

「はい。もう終わります」

心配させるし、ペースを上げて切り上げよう。そう決めると手元がスムーズに動き、あっという間に処理を終え、デスクの上の書類が綺麗に片付いた。

あとは画面をシャットダウンするだけにし、最後にPCの向こうにいる課長に「課長、こっちは終わりました。なにかお手伝いすることはありますか?」と声をかける。

「あ、いえ。ないです。どうぞあがってください」

「そうですか? ではすみません、お先に失礼します。明日はお休みをいただきますね」

シャットダウンを実行し、足元の荷物をまとめて白いバッグを肩にかける。

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